Red cat の数学よもやま話・新装開店

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小難しい二次方程式の話(その 1)

先日紹介した「数学ガール/ガロア理論」でも述べられている通り, 代数方程式と体の拡大と対称群には深い関わりがある. そこで今回は二次方程式を例にとって, 敢えて中学生でも知っている二次方程式の解の公式を小難しく書いて大人チックな読み物にしてみよう, というのが此度の試みでございます.

二次方程式 {f(x)=x^2+px+q=0} の解を {\alpha_1,\alpha_2} として, {\alpha_1,\alpha_2} の有理式 {V=V(\alpha_1,\alpha_2)} で, {\sigma,\tau\in S_2} について
{\sigma\ne\tau\Rightarrow\sigma(V)\ne\tau(V)}
となるものを考えたい. ここで {\sigma(V)=V(\alpha_{\sigma(1)},\alpha_{\sigma(2)})}.

実際そのようなものはあって, {V=\alpha_1-\alpha_2} とすればよいことがわかる. ところでこの {V}{p,q} で表すことはできないか.

{\begin{align}
(\alpha_1-\alpha_2)^2
&= (\alpha_1+\alpha_2)^2-4\alpha_1\alpha_2 \\
&= p^2-4q
\end{align}}
であるから, {V=\sqrt{p^2-4q}} は一つの候補となりそうである. そこで {K=\mathbb{Q}(p,q)} にこの {V} を添加した拡大体 {K(V)} を考えてみたい. (続く)