直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 9)
前回に引き続き Heyting 代数の性質を見ていきます.
最小元 を持つ Heyting 代数 において と定義し, これを の擬補元と言うのでした. 今回は擬補元の性質を中心に見ていきます.
1. ならば
2.
の定義より明らか.
3.
2. より
4.
3. で を で置き換えると 一方で 3. に 1. を適用すると よって
5.
6.
これは長いので証明は省略.
4., 5. と前記事の 7. を使えば証明可能.
正則性
さて, は常に成り立つのですが, 等号 に関しては常に成り立つとは限りません. については, 以下の 2 条件が同値であることが分かります.
- となる が存在する.
は明らかですが, については
が上のいずれかの条件(したがって両方)を満たすとき, は正則(regular)であると言います. もし全ての が正則ならば, は Boole 代数であることが, 以下のように示されます.
と置きます. 定義により です. 分配則により
なので と がともに成り立ちます. 故に かつ が成り立つので すなわち
よって
以上により は の補元となり, は Boole 代数である.
Heyting 代数にはまだまだ面白い性質があります(6. のような弱い形での de Morgan の法則が強い意味で成り立つための様々な条件の同値性など)が, 一般論はここまでにして, 次回, 完備 Heyting 代数のお話をします.