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Red cat の数学よもやま話・新装開店

はてなダイアリー「Red cat の数学よもやま話」から徐々にこちらに移行していきます。

楽しい圏論(その 2)

一ヶ月ほど間が空いてしまいましたが, ようやくブログを書ける状態になってきたので再開します.

函手の定義

{\mathcal{M}_1, \mathcal{M}_2} を二つの圏(の射のクラス)とします. クラス関数 {F : \mathcal{M}_1 \to \mathcal{M}_2} は, 以下の二つの公理を満たすとき, 函手(functor)であると言います.

  1. {e}{\mathcal{M}_1} の恒等射ならば {F(e)}{\mathcal{M}_2} の恒等射である.
  2. {\mathcal{M}_1} において {xy} が定義されているならば {\mathcal{M}_2} において {F(x)F(y)} が定義されており, {F(xy) = F(x)F(y)} である.

{\mathcal{O}_1, \mathcal{O}_2} をそれぞれ {\mathcal{M}_1, \mathcal{M}_2} に対応する対象のクラスとするとき, {A \in \mathcal{O}_1} に対して {F(A) \in \mathcal{O}_2}
{1_{F(A)} = F(1_A)}
なる対象と定めることにより, {F} はクラス関数 {F : \mathcal{O}_1 \to \mathcal{O}_2} を導きます.

前回, 射の値域と定義域の話をしました. {1_B = R(x)} を満たす {B} のことを {Range(x)} と, また {1_A = D(x)} を満たす {A} のことを {Domain(x)} と書くことにします.

命題 0.4. {F(Domain(x)) = Domain(F(x)), F(Range(x)) = Range(F(x)).}

(証明)*1

{F(D(x))} は恒等射で, かつ {F(x)F(D(x)) = F(xD(x))} が定義されているから {F(D(x)) = D(F(x)).} 同様に {F(R(x)) = R(F(x)).} 以上から従う. ■

タネ本

何だか射の話ばかりが出てきて, 多分他の書籍で圏論を知った人は驚くかも知れませんが, これでちゃんと理論になっています. この方法にはタネ本があります.

Abelian Categories

Abelian Categories

(自分が持っているものとは出版社が違いますが, 中身は多分同じ ?)

この本では, 今回のようなやり方で圏と函手を定義しています.

特殊な圏

以下, 頻繁に(?)使用する特殊な圏をいくつか定義します.

射のクラスが空集合である圏を空圏と言い, {\boldsymbol{0}} で表します. もちろん, 空圏には対象も存在しません.

射のクラスがただ一つの恒等射だけからなる圏を {\boldsymbol{1}} で表します. {\boldsymbol{1} = (\{*\}, \{1_*\}).}

射のクラスが二つの恒等射 {1_A, 1_B}と, 恒等射ではないただ一つの射 {x \ (D(x) = 1_A, R(x) = 1_B)} の三つの元からなる集合である圏を {\boldsymbol{2}} で表します. これは後で述べるように, 集合 {\{0, 1\}} に通常の大小関係で定まる順序を入れた順序集合を圏とみなしたものと同じです.

射のクラスが

  • 三つの恒等射 {1_A, 1_B, 1_C}
  • 恒等射でない二つの射 {x, y \ (D(y) = 1_A, R(y) = D(x) = 1_B, R(x) = 1_C)} とその合成 {xy}

の 6 個の元からなる集合である圏を {\boldsymbol{3}} で表します. これも後で述べるように, 集合 {\{0, 1/2, 1\}} に通常の大小関係で定まる順序を入れた順序集合を圏とみなしたものと同じです.

射のクラスが, 二つの恒等射 {1_A, 1_B} と恒等射でない二つの射 {x, y} からなり, {D(x) = D(y) = 1_A} かつ {R(x) = R(y) = 1_B} であるものとします. この圏は {\downdownarrows} で表します.

順序集合は圏である

{A} が順序集合であるとは, 台集合 {A} と関係 {O \subset A \times A} の組 {(A, O)} が以下の条件を満たすことでした.

  1. (反射律) {\Delta_A \subset O,} ただし {\Delta_A = \{(a, a) | a \in A\}} は対角集合.
  2. (反対称律) {O \cap O^{-1} = \Delta_A,} ただし {O^{-1} = \{(b, a) | (a, b) \in O\}} は逆関係.
  3. (推移律) {O \circ O \subset O,} ただし {O \circ O = \{(a, c) | (\exists b \in A)((a, b) \in O \wedge (b, c) \in O)\}} は関係の合成.

そこで, {O} を射の集合として, 射の合成を {(b, c) \circ (a, b) = (a, c)} で定めると, これを圏とみなすことができます. {1_a = (a, a)} なる対応によって, {A} を対象の集合とみなすことができます.

このことを使うと, 通常の数の大小関係による順序付けでもって
{\boldsymbol{2} = \{0, 1\}, \boldsymbol{3} = \{0, 1/2, 1\}}
となることがわかります.

対象は函手であり, 射は函手である.

{\mathcal{C}} の対象は函手 {A : \boldsymbol{1} \to \mathcal{C}} とみなすことができます. また {\mathcal{C}} の射は函手 {x : \boldsymbol{2} \to \mathcal{C}} とみなすことができます.

*1:タネ本では「特に証明することはない」と書いていますが, ざっくりと説明しておきます.