楽しい圏論(その 6)
今回はいよいよ米田の補題を証明しますが, 少しだけ準備をします.
双対圏(再)
以前, 圏 の双対圏 を定義しましたが, 圏 における言明 は, 双対圏に写ることによって双対言明 に書き換えられます. であることを考えれば, 圏 における言明 が においては双対言明 に書き換えられることになります.
以前, 束論の話の中で束 は圏とみなせる, という話をしましたが, が束ならば も束なので, 一般の束においてある命題が成り立てば, 常にその双対命題も成り立つ, ということが圏論からもわかる, という理屈になります.
なお, 函手 があるとき, とすれば函手 が得られます.
米田の補題の証明
ステートメントは前回紹介しましたが, ここでは上記の双対圏の話を踏まえて以下の形で証明します.
米田の補題 は局所的に小さな圏とする.
を函手とするとき自然同型
が存在する. ただし は米田函手
以下, 証明です.
自然変換 に対して
と置きます. と仮定します. このとき可換図式
( に対して )
から
で, と は任意だったから
一方, に対して を と に対して
で定義すると, 次図は可換となります.
()
実際 に対して
従って は から への自然変換です. このとき
最後に自然性を見ます. において自然であることは と自然変換 に対して
すなわち次図の可換性からわかります.
ここに上辺の射は
において自然であることを示します. とすると, に対して
より, 次図が可換となります. ただし上辺の射は
以上により が自然同型であることが分かりました.