ある実例
を可換環とします. 集合 が与えられたとき, の元を基底とする自由 -加群が作れます. これを で表すことにします. すると函手 が作れます.
一方, -加群 に対して, -加群であることを忘れてただの集合とみなす函手*1 が作れます. 射も -準同型であることを忘れて単に集合間の写像とみなします.
このとき, 以下の関係が成り立ちます.
つまり, を基底の集合とする自由 -加群から任意の -加群への -準同型は, 基底の像によって完全に決定されるということです.
さらに, 以下のような自然性が成り立ちます. 第一に, 写像 があるとき, に対して
第二に, -準同型 があるとき, に対して
今回からしばらくの間, このような現象を一般化した概念である「随伴函手」について書いていきます.
随伴函手
圏 と の間に函手 と があって, と において自然な同型
が存在するとき, は の左随伴函手(left adjoint functor)であると言います. また, このとき同時に, は の右随伴函手(right adjoint functor)であると言います. 記号では と書いている書籍もあります. 図にすると以下のようになります.
函手 に対して函手 で の左随伴函手であるようなものが存在するとき, は左随伴函手を持つ, という表現をします. 右随伴函手を持つ, という表現も同様です.
定義において双対を取ると なので, が左随伴函手を持つことと が右随伴函手を持つこととは同値です. この意味で, 左随伴函手と右随伴函手は互いに双対の概念になっています.
*1:忘却函手(forgetful functor)と言います.