Red cat の数学よもやま話・新装開店

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楽しい圏論(その 8)

年忘れ圏論大会 ! (ぁ

1 年半ぶりの記事の前に, ちょっとブログの今後の運用について.

連載記事に関しては, 今書いている圏論の話が一段落したら終了とします. 今後はサイトを作ってそちらでまとめていく予定です. 今後は単発のトピックのみ取り扱っていきます.

今回は普遍射についてお話します.

随伴函手と普遍射

函手 {U : C\to D} が左随伴 {F : D\to C} を持つことと, 次のような条件が同値になります.

{D} の任意の対象 {d} に対して, {C} の対象 {Fd} と射 {\eta_d : d\to UFd} が定まり, 任意の射 {f : d\to Uc} に対して次図が可換になるような射 {f' : Fd\to c} がただ一つ存在する.

実際, {U} の左随伴 {F} が存在すれば, 自然同型 {C(Fd, c)\cong D(d, Uc)} が存在するので, この同型で {1_{Fd}} に対応する射を {\eta_d : d\to UFd} とすれば {f : d\to Uc} に対して, この同型で対応する射 {f' : Fd\to c} が条件を満たすただ一つの射になります.

逆を示すために, {f : d\to d'} に対して {Ff : Fd\to Fd'} を決めなくてはなりませんが, これは次図を考えると上手く行きます.

図を可換にするような {g} がただ一つあるので, これを使って {Ff = g} と定義すれば良いことがわかります. このとき自然同型 {C(Fd, c)\cong D(d, Uc)} が成り立つことは演習としましょう.

ここで出てきた {\langle Fd, \eta_d\rangle}{d} から {U} への普遍射(universal arrow)と言われているものです. この言葉を使うと

{U : C\to D} が左随伴を持つことは, {D} の任意の対象 {d} について {d} から {U} への普遍射が存在することと同値である.」

ということを今回示したことになります.