「数学ガール/ガロア理論」第 4 章において、1 の原始 12 乗根と円分多項式の話題が取り上げられている。読者の方の中には「何故 12 なのか ?」と思われた方がいるかもしれない。
答は「12 が約数の数が豊富である」ことによる。たとえば 8 や 10 なら 12 よりも数として小さく、しかも約数は 4 個しかない。一方、ちょっと欲張って 15 くらいにしてみても、やはり約数の数は 4 個しかない。
12 は、それほど大きくない数であるにもかかわらず、1, 2, 3, 4, 6, 12 と何と 6 個もの約数を持っている、何とも不思議な数である。20 以下の数では 18 と 20 もやはり約数は 6 個であるが、12 と比べてやや大き過ぎるきらいがある。
古来、人類は 10 進法よりも 60 進法を好んで使ったとされる。理由は「60 の約数が豊富にある」からである。先述の通り 10 の約数は 4 個しかない。しかし 60 は
1, 2, 3, 4, 5, 6, 10, 12, 15, 20, 30, 60
と、何と 12 個もの約数を持つ。そしてこの 60 進法は「1 時間 = 60 分」「1 分 = 60 秒」という形で今なお息づいているのである。
約数の豊富さはときに話を複雑にするが、一方でそれは数学的な「面白さ」を生み出す。「数学ガール/ガロア理論」第 4 章は、12 という数を題材に選んだ作者のセンスがきらりと光る章である。
- 作者: 結城浩
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- 発売日: 2012/06/01
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