直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 7)
今回は Boole 代数に関する大事な性質について見ていきます.
Boole 代数ではない Heyting 代数が存在する
補題 を Heyting 代数とする. もし に対してその補元が存在するならば, それは擬補元 である.
(証明)
を の補元とする. このとき であるから である. よって単調性により
であるから は定義より直ちにわかるから, も の補元である. は分配的だから, 補元は存在すれば一意である. 故に
を, 通常の大小関係を入れて順序集合と見ると, これは有界束になっています. このとき は
で は
です. そして については
が成り立ちます. よって擬補元については以下の表のようになります.
が Boole 代数になるためには擬補元が補元に一致する必要がありますが, においては
なので, は Boole 代数ではありません. しかし Heyting 代数ではあるので, これは Boole 代数ではない Heyting 代数の例になっています.