Red cat の数学よもやま話・新装開店

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2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 10・最終回)

完備 Heyting 代数 Heyting 代数は束として完備であるとき, 完備 Heyting 代数(complete Heyting algebra)と言います. 良く cHa などと略されます.同様に Boole 代数が束として完備であるとき, 完備 Boole 代数(complete Boole algebra, cBa)と言います.既に…

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 9)

前回に引き続き Heyting 代数の性質を見ていきます.最小元 を持つ Heyting 代数 において と定義し, これを の擬補元と言うのでした. 今回は擬補元の性質を中心に見ていきます.1. ならば 2. の定義より明らか.3. 2. より 4. 3. で を で置き換えると 一方で …

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 8)

今回は Heyting 代数の性質についてもう少し詳し見ていきます. 以下 は Heyting 代数とし, とします.1. より明らか.2. ならば より.3. 函手 が極限を保つことから従う.4. と から により よって 分配圏の性質としても導くことができる. 5. と から従う.6. と…

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 7)

今回は Boole 代数に関する大事な性質について見ていきます. Boole 代数は Heyting 代数である 補題 (証明) 定理 Boole 代数は Heyting 代数である.(証明) と補題により Boole 代数ではない Heyting 代数が存在する 補題 を Heyting 代数とする. もし に対し…

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 6)

前回まで束に関する一般的な性質を見てきましたが, 今回からいよいよ Heyting 代数の話をします. Heyting 代数の定義 は有界束とします. このとき が Heyting 代数であるとは, が圏*1として冪を持つことを言います. すなわち函手 が右随伴函手 を持つことを…

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 5)

ある方から証明を教えていただくことができた(正確には証明が載っている書籍を紹介していただいた)ので, 前回あいまいにしていた部分を消化しておきます.定理. が分配束でなければ を満たす が存在する.(証明) 1. がモジュラー束でないとき このとき かつ を…

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 4)

束についてもう少し 一般の束に関する性質をもう少し見ていきましょう. が成り立ちます(単調性).これは と からわかります.また … (*) が成り立ちます. これは定義に従って地道に示せますので, 証明は省略します.(*) 式から が導かれます. このことと単調性…

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 3)

圏としての束 もう少し束の話を続けたいのですが, 圏論の知識を持っているといろいろと楽なことが多いので, 束を圏とみなす方法を紹介します.一般に束 はそれ自体半順序集合です. これを圏とみなすためには以下のようにします. 圏 の対象は の元. 圏 の対象 …

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 2)

有界束と完備束 有界束 束 は自然な方法で半順序集合とみなせることは前回分かりました. そうなると最小元や最大元は存在するのか, は自然な興味の対象になりますし, 当然ながら常に存在するとは限りません.最小元と最大元がともに存在する束を有界束と言い…

直観主義論理の入り口~Heyting 代数~(その 1)

半年ぶりの記事です. 今回は, 数回にわたって Heyting 代数について書きたいと思います. 半順序集合と束 半順序集合から束 を半順序集合とします. すなわち について (反射律)*1 (反対称律) (推移律) が成り立つものとします. について を満たす が存在する…