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Red cat の数学よもやま話・新装開店

はてなダイアリー「Red cat の数学よもやま話」から徐々にこちらに移行していきます。

本当に難しい三次方程式の話(その 1)

何でたかが二次方程式をそこまで小難しくやったのかというと, 実は今日から数回にわたってお話する三次方程式の議論のための伏線でありました. だからここからが本題です.

我々は Tschirnhaus 変換によって三次方程式は
{f(x)=x^3+px+q=0}
の形のものだけを考えればよいことがわかっているので, 以下そのように取り扱う. そこで前回二次方程式で考えた {V} のようなものを作りたいのだが, それは三次方程式だと {\mathbb{Q}(\omega)} 係数の有理式
{L=\omega\alpha_1+\omega^2\alpha_2+\alpha_3}
となる. ここで私は {V} でなくわざと {L} と書いた. 察しの良い方ならもうお分かりであろう, これは「数学ガール/ガロア理論」の第 7 章で現れた Lagrange resolvent の片割れそのものである. ただ {\alpha,\beta,\gamma} ではなく, 群の作用がわかりやすくなるように {\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3} と書いた.

さてこれに {S_3} の元 {\tau=(1\ 2)} を作用させてみると
{\tau(L)=\omega^2\alpha_1+\omega\alpha_2+\alpha_3=R}
と, Lagrange resolvent の相方が出現する. これは {L}{p} を用いて {\displaystyle R=-\frac{3p}{L}} と書ける. 実際に計算して確かめてみてほしい. 我々はいつでも {\alpha_1+\alpha_2+\alpha_3=0} を使って良いことに注意すること.

一方 {L}{\sigma=(1\ 2\ 3)\in S_3} を作用させると
{\sigma(L)=\alpha_1+\omega\alpha_2+\omega^2\alpha_3=\omega^2 L}
となる. そのほかについても計算すれば
{\sigma^2(L)=\omega L,\tau\sigma(L)=\omega^2 R,\tau\sigma^2(L)=\omega R}
となって 6 個とも確かに異なる値である. またこれらから
{\displaystyle\alpha_1=\frac13(\omega^2 L+\omega R),\alpha_2=\frac13(\omega L+\omega^2 R),\alpha_3=\frac13(L+R)}
がわかるので
{\displaystyle\varphi_1(x)=\frac13\left(\omega^2 x-\frac{3\omega p}{x}\right),\varphi_2(x)=\frac13\left(\omega x-\frac{3\omega^2 p}{x}\right),\varphi_3(x)=\frac13\left(x-\frac{3p}{x}\right)}
とおけば
{\varphi_i(L)=\alpha_i\quad (i=1,2,3)}
がわかる. 当面は体 {K=\mathbb{Q}(\omega,p,q)} に頑張っていただくことにしよう. (続く)