Red cat の数学よもやま話・新装開店

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本当に難しい三次方程式の話(その 2)

さて, {\sigma\in S_3} が生成するところの {S_3} の部分群である 3 次交代群 {A_3}{L^3} を(したがって {R^3} も)動かさない. ということは {K(L^3)}{A_3} に対応する不変体であり, 拡大 {K(L)/K(L^3)} の次数は {A_3} の位数であるところの 3 に等しい. しかるに拡大 {K(L^3)/K} の次数は, となるのだが, あいにくと {L^3\not\in K} である. しかし
{L^3+R^3=-27q,L^3R^3=-27p^3}
と、{R^3}{L^3} と軛を共にしてくれる. つまり {L^3}二次方程式
{g(y)=y^2+27qy-27p^3=0}
の解なのである. これにより {K(L^3)/K} の拡大次数は 2 とわかるから {K(L)/K} は 6 次拡大であるとわかる. {L} の最小多項式は(一般の {p,q} に対しては)
{f_L(x)=x^6+27qx^3-27p^3}
となる.

ところで {g(y)=0} の判別式 {D'}
{D'=27(4p^3+27q^2)}
なのであるが, 一方で別の観点から計算すると
{D'=-27(\alpha_1-\alpha_2)^2(\alpha_2-\alpha_3)^2(\alpha_1-\alpha_3)^2}
となる. ここで {\sqrt{-27}=3\sqrt{-3}\in\mathbb{Q}(\omega)} であるから
{D=(\alpha_1-\alpha_2)^2(\alpha_2-\alpha_3)^2(\alpha_1-\alpha_3)^2}
の部分が問題となる. これは元の三次方程式の判別式の定義式である. つまり
{D=-4p^3-27q^2}
が元の三次方程式の判別式である. 今は {p,q} は不定元として考えているから {\sqrt{D}}{K} には属さないが, 具体的な {p,q} が与えられれば当然事情も変わってくるので, 具体的な三次方程式の Galois 群はさまざまであるが, 共通して言えることは, それらは {S_3} の部分群である, ということである. (続く)